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英語を学ぶことは
僕のために必要なことだった

とにかく英語に触れようと思って行動した

──英語は、10代の頃から独学で学んできたとお聞きしました。
僕は中学校1年生から英語の授業が始まる世代だったので、みんなと同じ様にそこがスタートでした。ただ、母親がスペイン人で、スペイン語の読み書きはできていたので、最初は「余裕だ」と思っていたんですよね。すごく覚えているんですが、英語の授業の前に同級生から「Good morning」を「これ、何て読むの?」と聞かれて、「ゴーモルニンだよ」ってスペイン語の読みで教えていたのに、いざ授業が始まったらぜんぜん違う(笑)。そんな恥ずかしい思いをしたスタートでしたが、今では、なんとか独学で日常会話レベルの英語力を身につけられたと思います。
──それはすごい!
まだぜんぜんです。英語ができると言うのもおこがましくて、今でも「(英語は)話せません」とか「少しなら」と言うようにしています。英語を話せそうな見た目なので、損をしている感じはありますね(笑)。
──独学でどのように英語を学んでいったのですか?
留学もしていないですし、日本で英会話教室などの専門的に学べる環境にいたこともまったくないんです。映画を観たり、音楽を聴いたりしながら、とにかく英語に触れようと思って行動してきました。勉強を始めて20年以上もあったのだから、毎日もっと真剣に勉強していれば、ネイティブレベルになっていてもおかしくないんですけど、残念ながらサボり気味だったので、そこまでは成長できていないですね。
──どんな勉強法が一番身についたと感じましたか?
やっぱり、耳を慣れさせることですね。僕らが小さい時に日本語を覚えたのも、特に勉強したわけではなく、人が話しているのを聞いて真似してきたからだと思うんです。英語に関しても同じで、例えば、映画を観ていて「For real?」ってフレーズが出てきたときに、これで「マジで!?」って意味なんだ、と知って使う感じです。勉強というよりは、発見をしていく感覚でした。
──映画ではどんな作品を観て学びましたか?
『トイ・ストーリー』などのディズニー映画を英語字幕にしてよく観ていました。子どもが観ても楽しめる作品はシンプルな表現が多いので、わかりやすかったです。
──―私も日本語を勉強中なのですが、日本人の友人の存在がとても大きいと感じています。
それが一番早いですよね(笑)。異なる言語でコミュニケーションを取らないといけない相手が近くにいたら、会話が苦手な人でもどんどん上達していくと思います。僕も、19、20歳ぐらいの時に、英語が話せるハーフの男の子と、日本人の男の子の3人で1年間くらい同居していたんですけど、彼らと「英語しか使っちゃいけないゲーム」をやったりしていました。
──2021年に放送されたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』では、見事な英語のナレーションも披露されていましたよね。
ありがとうございます。ただ、僕は今でも自分のナレーションを恥ずかしくて聞けないんです。あのドラマで僕に求められていたのは、100%アメリカ人としての英語でした。僕は若い頃から英語に触れてはいたものの、若干のスパニッシュアクセントがあったりして、アメリカ人のネイティブな発音とは明らかに違うんですよね。多くの視聴者の方たちは気づかないことかもしれないけど、やるからには僕は完璧なアメリカ英語の発音を目指したかった。それが俳優としてやるべきことだと思うけれど、100点のものにはならなかったと思います。気軽に楽しめるような仕事ではありませんでした…。

英語学習は「勉強」というより「発見」していく感覚

英語で会話する時は神経を全集中して聞く

──ミュージカルやアーティストでの活動で、海外のスタッフとは英語でコミュニケーションを取るそうですね。
なんとか会話できています。先日も、シンガポールで公演があって、英語しか話せない方がゲストで参加してくれたのですが、基本的には通訳なしでコミュニケーションを取っていました。細かなディテールの部分では通訳の方に入ってもらうことはありますが、簡単な話や意思疎通に関しては問題なくできていると思います。ミュージカルの場合、演出家が海外の方というケースもたくさんあるんですが、基本的に7、8割は英語を使って自分でやり取りをしています。
──そうした中で刺激を受けるところはありますか?
これは自分の経験からくるイメージで、すべての方がそうではないだろうと思いますが、日本の場合は「決めたことを絶対にやる」ということが多いと感じます。もちろんそのように責任や義務を重んじるのは日本人の素晴らしさですが、一方で、外国の人たちは決めたことを覆してでも、面白いことを求めていく柔軟さがあると思います。その反面、ドライな面もあって、以前、こんなことがありました。稽古でうまくいっていないキャストがいて、アメリカの演出の方が僕を呼んで「I wanna fire him.(彼を首にしたいんだ)」と相談されたんです。僕は、「That's impossible in Japan.(日本ではそれはできないよ)」と答えたのですが、それぐらい感覚が違うんですよね。
──わかるような気がします。
もちろん日本にもいいところがあって、海外のスーパースターたちは日本のミュージカルを見ると「こんなに揃ったアンサンブルは見たことがない」って驚くんですよ。アンサンブルというのは、後ろで歌ったり踊ったりする、役名もついてなかったりする出演者のことなんですが、海外のアンサンブルの人たちは自己主張が強いのでダイナミックさはありますが、一体感や統制感といった点においては、圧倒的に日本の方がレベルは高いみたいです。
──これまで英語を学んできて、挫折を感じたことはありましたか?
何回もありますよ。アメリカで現地の人たちに交じった時なんかは、会話のスピードも速くなるし、知らない言葉がポンポン出てきて、置いていかれてしまいます。そういう時は、途中で会話を止めると話の腰を折ってしまうので、ひとまず神経を全集中して聞いて、後から答え合わせをするようにしています。「ここまではついていけたんだけど、そのあと何を話していたの?」って。
──まずはしっかり聞いて後で質問する、そうした積み重ねは大事です!
そういう時、もっとちゃんと勉強しておけば良かったと思います。今も英語学習のアプリを入れたりしていますけど、忙しさを言い訳に、しっかりと英語を学ぼうという頭にはなかなかなれなくて。英語のエンタメを見たり聞いたりしているので現状維持はできていますが、残念ながら成長はできていないんです。
──独学ではなく、本格的に英語を学びたい気持ちがあるんですね。
もちろんです。この先、自分のフィールドを増やしていくためには、英語力が絶対に役立つと思っています。だから、若い人たちと話す機会があった時は、「僕たちの仕事は英語ができる、できないで仕事の幅が変わるから、絶対できた方がいい」って、おせっかいおじさんをすることも多いです(笑)。
──英語を学びたい方たちにはぜひECCをおすすめしてください(笑)。

これから何をするとしても英語が話せて絶対に損はない!

たくさん間違えてたくさん恥をかくこと

──先日、城田さんがプロデュースした『TOKYO ~the city of music and love~』のシンガポール公演が開催されました。最近は日本のエンターテインメントの輸出や、後進の育成といった意識が強まっているのでしょうか?
まさにその通りです。今回の公演は、あらゆる政治的な要素をとっぱらって、僕が「この人はうまい」と思った人たちを揃え、歌とダンスを高いクオリティで作ることに尽力して、海外にも持っていこうという試みでした。今回は一カ国だけでしたが、これからも日本のエンターテインメントのレベルをもっともっと上げていきたいですし、自分自身としても、そういった挑戦をしていきたいと考えています。
──10月にはご自身のデビュー25周年を記念したコンサート『城田優 25th Anniversary Orchestra Concert 〜featuring Naoya Iwaki』も開催されます。
ミュージカルやショーではエンターテインメントとして面白い仕掛けなどに注力するタイプなんですが、このコンサートに関しては上質な音を届けるというイメージです。25年という節目の年に、今まで培ってきた自分の表現力、歌唱力、音楽性のようなものを、オーケストラと一緒に表現したいなと思っています。
──最後に、夢に向かって英語を学んでいるECCの生徒のみなさんに、メッセージをお願いします。
そこまでのレベルでなくて申し訳ないですが、留学をせずとも気合いと根性でなんとか日常会話レベルの英語ができるようになることについては、少なくとも僕がその証明になれるかなと思います。僕は中学校で習うような、英文法を完璧に理解しているわけじゃありませんが、コミュニケーションは取れるようになり、英会話だけはできるようになりました。「間違えたくないから、ちゃんと話せるようになってから外国の人たちと話そう」と思っているうちは、絶対にできるようにはなりません。まずは勇気を出して飛び込んで、そしてたくさん恥をかいてください。少なくとも、僕はそうやって英語を身につけてきました。例えば、高校の英会話の授業でも、同級生たちが「サボれる時間だ〜」と好き勝手にしている時に、外国人の先生に発音を聞きにいったり、積極的に世間話をしたりしていました。そのマインドが今につながっているんじゃないかと思います。
──素晴らしい行動力ですね。
これから先、何をやるにしても英語を使えることに絶対に損はないと思うんです。周りの後輩たちに、僕が唯一強く勧めているのが「英語」なんですよ。これはECCさんの取材だからそう言っているわけではなく、英語が使えるのと使えないのでは、本当に世界が変わると思っていますし、これからの時代はそれがより強まっていくと思います。だから、ぜひそれぞれのスタイルで、無理のない範囲で人生を楽しみながら、学習を続けていってもらいたいです。

Interviewer
Wesley Harris
ウェスリー・ハリス

ECC外語学院講師。アメリカでヒップホップ歌手として活動経験があり、音楽という共通点がある城田さんと話が弾んでいました。

城田 優

1985年生まれ。日本人の父親とスペイン人の母親を持つ。2003年に俳優デビュー。以降、テレビ、映画、舞台、音楽など幅広く活躍。2016年に『アップル・ツリー』で演出家デビュー。本年5月には自身がプロデュース・演出・出演するエンターテインメントショー『TOKYO~the city of music and love~』を開催。初の海外公演で成功を収める。10月には自身の活動25周年を記念したオーケストラコンサートを開催する。

スペシャルゲストにミュージカル界のスター、花總まりを迎え、新進気鋭の作編曲家・鍵盤奏者の岩城直也が率いるオーケストラと共に、城田優の活動25周年を華やかに彩る。

東京公演
会場:サントリーホール大ホール
日時:10月7日(月) 開場17:30 開演18:30
大阪公演
会 場:フェスティバルホール
日時:10月30日(水) 開場17:30 開演18:30
公式サイト:https://yushirota25th.jp/

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