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自分の中の壁を壊せたら英語が上達していくのを感じました

もっと楽しく会話したい それがきっかけでした

──―幼少期から、ご家庭で英語に触れる機会があったそうですね。
両親とも日本語、英語、ペルシャ語の3カ国語を話せるんです。母親が外国人で、父親は日本人なんですけど、2人とも先生で、自宅でECCさんのような英会話教室を開いていました。教室には、カナダやイギリス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、さまざまな国の出身の先生がいたので、両親だけではなく、先生たちとも英語で話していたんです。英語をもっと身に付けたいと思ったのは、その人たちともっと楽しく深く話ができたらいいなと思ったのがきっかけです。
私も母が教えている英会話のクラスで学んでいたので、無料で英語教育を受けている感じでした(笑)。日本で生まれ育って、中学生までは日本の学校に行っていたので、学校では日本語を使っていたんです。でも、家庭では日本語と英語をミックスして会話をして、一生懸命、英語の勉強をしていました。
──なんでも英語を学ぶために「No Japanese」ルールを設けたとか…。
家での英会話の授業中は「No Japanese」でしたね。わからない単語があっても、それを別の英語で説明するようにしていました。でも、みんなとっさに日本語が出てきちゃうんですよ。だから、「えっとー」みたいなつなぎ言葉を使いたいときも、「Umm」とか「Let me see」のように、なるべく英語を使うように意識していました。
──英語が上達したと感じた瞬間はありましたか?
ある日、突然コツが掴めるようになったんです。その瞬間のことはすごく覚えています。それは、自分のシャイな部分を克服できたときでもありました。私が出会った英語を話す人たちは、みんな自己表現がうまくて、シャイな人はほとんどいなかったんですね。自分の中でまずその壁があったんですけど、あるときそれがなくなって、「別に間違えてもいいや」っていう気持ちになったら、そこから、すごく英語が上達していきました。たしか小学校の高学年くらいのときだったと思います。
──発音もとてもきれいですよね。
発音に関しては、小さい頃から学んでいたことが大きいのかなと思うので、そこはありがたいですよね。でもそれは、本当にネイティブな発音を目指すなら…という話で、コミュニケーションのための英語を学ぶなら、学び始めるのに遅すぎるということはないと思います。

自分の好きなもので英語に触れるのが一番!

──語学留学の経験はありますか?
ないんですよ。でも、高校からはアメリカンスクールに通っていたので毎日英語を使っていました。
私はずっと歌手になりたかったんですが、通っていた中学校が厳しくて、芸能活動ができなかったんです。高校は芸能活動を許可してくれるところに行こう、せっかくならインターナショナルスクールに行きたいなといろいろ探しました。最終的には、私が最も尊敬している宇多田ヒカルさんが通っていた学校を選びました。
──アメリカンスクールでの生活はいかがでしたか?
大変でした。幼稚園から通っていたり、両親の転勤で海外から来ていたりする生徒が多くて、私のように高校から通う人は、ほぼいなかったんです。入学試験を受けて入ったので、学力的には問題ないレベルではあったんですが、数学や理科、社会などは英語で授業を受けたことがなかったので、はじめはキャッチアップに精いっぱいでした。宿題も毎日たくさんありましたし、4年間ずっと大変でした。
──授業以外だと、どうやって英語を学んでいましたか?
何度も映画を観ました。最初は日本語字幕で観て、内容を理解してから英語字幕で観て、細かく覚えていく感じです。10代の頃って、好きなものにすごく没頭できるじゃないですか。やっぱり自分の好きなものから英語に触れることが、一番いい方法なんじゃないかなと思います。
──その頃によく観ていた作品はなんですか?
たくさんありますが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が好きでした。小さい頃から繰り返し何度も観ています。でも、勉強になるという点では、実践できる流行り言葉がたくさん出てくるので、高校生が出てくる青春映画やドラマが参考になりました。それは音楽も同じで、当時はCDの歌詞カードを見ながらラップミュージックをよく聴いていました。学校では教えてくれないスラングやリアルなフレーズが使われているので、そういうものはラップミュージックなどの音楽から取り入れるようにしていました。
──僕も日本語を習得するためによくJ-POPを聴いていましたよ。ちょっと言いにくいんだけど…ハロー!プロジェクトが好きで、モーニング娘。の曲でたくさんの日本語を覚えました。モーニング娘。が出ているバラエティー番組も、何度も観て…。
やっぱり! 好きなものだといくらでも観られちゃうから自然と覚えますよね(笑)。

私が先生になるなら楽しい授業がしたい!

──生徒に教えるときも「何が好きですか?」と聞いてから、それについて英語で話してもらうようにしています。もし、May J.さんが特別講師として ECCでレッスンを行うとしたら、どんな内容にしたいですか?
楽しいことがしたいですね。そうすると会話が一番上達できると思うので、まずは「最近何した?」と、近況報告をし合って、そしてゲームをしたいです。カードゲームやボードゲームで「No Japanese」で遊びます(笑)。
──すごく楽しそうです。僕もレッスンをするときに近況報告から始めるんですよ。ご両親の教室でもそういうレッスンだったんですか?
そうなんです。もちろん教材も使いますが、それは本当にちょっとだけで、英語でたくさん会話をしていました。ゲームだけでなく、英語で歌うこともありました。
──歌を使うことはよくありますね。「Mary Had a Little Lamb」や「Sunday, Monday, Tuesday(曜日の歌)」のような、単語を音楽と一緒に覚えられる童謡はとてもポピュラーです。May J.さんは洋楽もずっと聴いてきたと思いますが、それも自分の語学上達に繋がったと思いますか?
すごく思いますね。歌詞から単語を知ることも多かったですし、好きなアーティストの曲は完璧に覚えたいと思うので、そのために意味も調べるじゃないですか。だから、「好き」という気持ちが英語を学ぶ原動力になっていると思います。
──よく聴いていたアーティストは誰ですか?
クリスティーナ・アギレラやマライア・キャリーは、歌も英語も勉強になるのでよく聴いていました。
──歌詞に感情をのせて歌うのは簡単なことではないと思います。英語で歌うことと、日本語で歌うことに違いはありますか?
英語は子音が多いのが特徴的で、音の遊び方が無限にあります。だから、ニュアンスがつけやすいんです。逆に、日本語はすべて「あいうえお」の母音で終わるから、実は日本語の方が歌うのは難しいんですよ。けど、日本語はその難しさがあるから、その中でどう表現していくかチャレンジする楽しさもあります。私は洋楽が好きですが、J-POPにはやっぱり日本語が合っていると思うので、そこは言語の違いを楽しみながら表現するようにしています。
──その違いは考えてもみませんでした! 言われてみたら確かにそうですね。英語の場合「T」だけでも、3つぐらい違ったサウンドができるから、確かに遊びの幅があるなと思いました。勉強になりますね。
先生はカラオケに行きますか?
──ええ。よく歌うのは、松田聖子さんの「青い珊瑚礁」です。
いい曲ですよね! そうか、日本のアイドルが好きなんですね。
──うーん、どちらかというと「日本の女性歌手」が好きかな。でも、たぶんその80%くらいはアイドル(笑)。

自分の夢や目標を大切に頑張りましょう!

──May J.さんの目標を教えてください。
やっぱり一番大きな夢といったらいつかグラミー賞をとれたらと思っています。そのためにも、自分の歌をさらに磨いて、SNSなどで海外の人たちに向けて、日本語と同じように英語での発信も頑張っていきたいなと思っています。
海外にも行きたいんですが、行きたいと思いつつ、4年ぐらい行けていないんです。でも、コロナ前は年に3、4回ぐらいお仕事で海外に行っていました。『J-MELO』(NHKワールドTV)という番組で15年近くMC(司会者)をやらせていただいているので、それこそ先生のように「モーニング娘。が大好き」という方に会いに行ったこともあります。部屋に入れてもらったんですが、ポスターがたくさん貼ってありました。
──僕の部屋は貼ってないですよ(笑)。
本当に?(笑)そういった方々を取材させていただいたり、もちろんライブもしたりしていました。印象的だったのは、インドネシアのジャカルタでライブをしたとき、たぶん初めて私の歌を聴く方がほとんどだったんですけど、いきなりみんなが「イェーイ」って合いの手を入れてくれてすごくびっくりしたんですよ。「聞いたことのない曲なのにどうしてできるの?」と驚いたんですが、音楽を通してひとつになれたように感じてうれしかったですね。
──最後にMay J.さんのように英語を話せるようになりたいと思っているECCの生徒のみなさんにアドバイスをいただけますか?
英語を身に付けるには、日々勉強だと思っています。私も、ウェブにある単語テストなどで単語を復習したり、ニュースに出てくる難しい英単語も、分からないと思ったらすぐに調べたりしています。ただ、なによりもまずは楽しく続けることが一番!私の場合は音楽、そして世界の人たちと繋がりたいという夢があったので、みなさんも自分の夢や目標を大事にして一緒に頑張っていきましょう。

May J.

1988年6月20日生まれ。日本、イラン、トルコ、ロシア、スペイン、イギリスのバックグラウンドを持ち、幼児期よりダンス、ピアノ、オペラを学び、作詞、作曲、ピアノの弾き語りもこなす。圧倒的な歌唱力とパワフルかつ澄んだ繊細な歌声、そして前向きでポジティブなメッセージが共感を呼び、幅広い世代から支持を受けている。社会現象にもなった、2014年日本公開のディズニー映画『アナと雪の女王』の日本版主題歌(エンドソング)を担当。歌手活動と並行し、MC、バラエティーへの出演と幅広く活躍。

Interviewer
Michael Grothe

ECC外語学院の外国人講師の人事を担当。最初はとても緊張していた様子でしたが、May J.さんと話しているうちに打ち解けていき…取材の合間には今観ている海外ドラマの話で盛り上がっていました。

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