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私が言葉を学ぶ理由(ワケ)

小さい頃から英語にふれていました

──森崎さんはミャンマーのご出身です。ご自宅ではおばあさまが英語教室をされていたそうですね。
小さい頃から、目が覚めたら英語の授業が聞こえてくる環境で育ちました。ちゃんと学びはじめたのは5、6歳の頃だったと思いますが、英語はずっと耳にしていたので、発音は良いほうだと言われます。英語は今でも勉強中です。
──第一言語はミャンマー語だそうですが、英語とはかなり違いますか?
ぜんぜん違いますね。 文法は日本語に近いですが、独特な言語だと思います。
──どのような勉強法で英語を身につけていったのでしょうか?
実は勉強が好きな子どもではなかったので、おばあちゃんに生徒さんが授業を受けている教室に放り込まれてHello」って会話しながら覚えていきました。10歳で日本に来てからは、英語を話せる母親に英単語を教えてもらって勉強を続けていたんですが、日本の生活にも慣れてきて一度英語から離れちゃったんですよ。だから映画『レディ・プレイヤー1』(2018)のオーディションを受けたときに、語学スクールに行かせてもらい、それを機にまた勉強をはじめました。
──日本語も日本に来てから学んだそうですね。
小学4年生のときに転入したんですが、普通の公立小学校だったので苦労しました。つらいこともありましたが、ラッキーなことにいい友だちができて、その子が守ってくれたんです。勉強するときは、NHKのEテレがとても参考になりました。学校から帰ってくるとずっとアニメを見て、日本語にふれていました。
──英語にせよ日本語にせよ、言葉が「身についた」と感じた瞬間は?
その言語で夢を見たときです。『レディ・プレイヤー1』の撮影でイギリスに滞在していたときに、英語で夢を見たんですよ。英語漬けの生活を送るなかで、夢にまで出てきたときに「あ、この環境にあってきたんだな」と感じました。
──私も、ボーイフレンドに「寝言で日本語と英語を話してたよ」って、言われたことがあります(笑)。『レディ・プレイヤー1』は森崎さんのハリウッドデビュー作になりましたが、ご自身の英語力に自信はありましたか?
今もですが、まったくなかったです。 二次オーディションのときに、監督から直接会いたいと言われてL.A.に行ったんですが、周りはすべて英語じゃないですか。空港のイミグレーションからすごく緊張していました(笑)。でも、必要に迫られれば人間何とかなるんですよね。日本に来たときもそうでしたが、そういうときに限って頭がすごく働くので、知ってる単語を使ってみたり、がんばってボディランゲージで伝えてみたり。僕の場合は追い込まれて何とかした!という感じです。
──あのスピルバーグ監督が自分に会いたがってるなんて、想像もできない状況です。
日本にいるときはまだ知らなくて、L.A.に着いてからキャスティングディレクターに「この映画について聞いてる?」「スピルバーグの映画よ」って言われて、「What!?」ってなりました(笑)。

ハリウッドで気づいた自分の未熟さ

──ご自身でもハリウッドデビューは「大きな転機」だったと話されていましたよね。
世界が広がったし、自分の力量を改めて知れたことが大きかったです。周りは「イエー!アイムハリウッドスター!」みたいに天狗になって帰ってくると思っていたみたいですけど、まったくそんなことにはならなくて(笑)。むしろ、自分はまだまだだなという気持ちの方が強くなりました。職業として第一線で活躍する一流の俳優の方々からは、勝ち負けではない世界に生きているすごさを感じましたし、自分にはまだまだ伸びしろがあるんだと思えたので、より楽しくなりました。
──ハリウッドでの撮影を通じて、改めて英語の必要性を感じることはありましたか?
もちろんです。撮影場所がイギリスだったので、イギリス英語だし、さらにロンドンから北に遠く離れた場所で、訛りがキツかったんですよ。「今なんて言ったの?」みたいなことが、すごく多かったですね。
──他の地域の訛りは私も理解するのが難しいことがあります。だから、そこまで気にすることないですよ(笑) 。
そうですね!でも、1人で行っていたから孤独だったし、天気もずっとどんよりしてるしで、最初の1カ月くらいはストレスで気持ちが落ち込んでいました。
──通訳はいなかったんですか?
最初はいたんですけど、「ウィンなら大丈夫だよ!」って、途中からいなくなっちゃったんです(笑)。 でもそのおかげで、できない自分を認めて、自分から飛び込んでいこうという気持ちになれました。恥ずかしさもあって「聞く」ということに躊躇しがちだったけど、「分からないものは分からないんだから、聞くことが一番」だと気づいて、それからは積極的に周りの人に聞くようにしていました。
──ほかにも、スタッフやキャストの方とコミュニケーションをとる上で心掛けていたことはありますか?
例えば「朝、何食べた?」って会話をするにしても、一言二言で終わっちゃうじゃないですか。僕は長く話したかったから、話題をいくつか用意して話しかけていました。人とのコミュニケーションにおいて、トピックを持っておくことも大切なんだと学びましたね。
──『レディ・プレイヤー1』にはメカゴジラやガンダムなど、日本のカルチャーもたくさん出てきました。森崎さん自身も日本を代表して出演している感覚はありましたか。
もちろんです。CGの制作チームの人たちは、いわゆるOTAKUの集まりなんで、アニメのこともすごく聞かれました。なかには日本語がちょっとしゃべれる人もいて、その人と仲良くなって、オフの日にはホテルの部屋で一緒にビールを飲みながらアニメを見て過ごしていました。

「やりたい」という気持ちを持つことが大切

──英語でコミュニケーションがとりたくてもなかなか勇気が出ないという人も多いです。一歩を踏み出すためのアドバイスはありますか?
何かをしようと一歩を踏み出すためのトリガーがどこにあるのかは人それぞれなので、一概には言えません。だけど「やりたい」という気持ちを持ち続けることが大切だと思います。「やりたいけど、まあいいか」って諦めた瞬間に、一歩踏み出すも何もなくなってしまうと思うんです。勇気が出ない気持ちはすごく分かります。
でも、英語を話せる自分の姿をイメージし続けていれば、英語で話すチャンスがあったときにうまくできなくても、絶対にまた次のチャンスがやってきます。だから、僕も自分に「やりたい」と言い続けて、常にプレッシャーをかけるようにしています。
──素晴らしいです!森崎さんはこれまで新しい生活環境に合わせて言語を身につけてきましたが、今、改めて英語を学ぼうとしているのには、どんな理由があるのでしょうか。
自分の夢や目標に対するやる気です。「もう一度ハリウッドに行きたい」「海外でやりたい」と、これだけ言っているのに、何も勉強してなかったら恥ずかしいし、自分が許せない。そういう性格なんです(笑)。
──具体的にはどんな学習をしていますか?
スケジュール的に学校に通うのはなかなかできないんですが、最近はオンライン英会話で、フリートークや教材を使った学習をしています。僕の場合は、発音は大丈夫でも、文法がぐちゃぐちゃになってしまうことがあるので、そこを重点的に学んでいます。
──私は日本語を理解しているつもりですが、分からない語彙が多くて映画を理解できなかったときに落ち込むんです。森崎さんはそんな気分になったことはないですか?
しょっちゅうですよ(笑)。僕の語彙はとても少ないので、初対面の方と英語で話すときはいつも緊張します。ときどき日本語で文章を作って、英語に翻訳してみるんですけど、頭の中で言語を切り替えるのって、とても大変ですよね。
──当たり前のように英語を話していると見られるかもしれませんが、当然、ほかの方と同じで疲れますよね。いい日もあれば、悪い日もある。だからそんなにプレッシャーを感じないでください。
ありがとう(笑)。

「ハリウッドにもう一度行く」その目標に見合う努力をしたい

理想の自分を常にイメージして!

──8月には主演ミュージカル『ピピン』の上演を控えていますが、楽しみにしていることはありますか?
もともとブロードウェイの作品なので、コロナの問題をクリアすれば、演出家の方も海外から来るんです。そうなると、英語で演出をされる可能性が高いので、それについていけるかが重要になってきます。日本だと英語だけの現場というのはなかなかないので、楽しみです。
──これから先の目標について、将来どんな自分になっていたいと思いますか?
飛行機に乗って世界中を飛び回っていたいです。いろんな場所に行くのがすごく好きだし、いろんな国で仕事がしたいです。
──特に行きたい国はありますか?
行ったことがない場所にはどこでも行きたいです。2020年7月に「MORISAKI WIN」としてメジャーデビューして、海外を視野に入れた音楽活動をしているんですが、アジアツアーを目標にしています。
──多言語を話し、海外でも活躍する森崎さんは、語学学習に励むECCの生徒にとって憧れだと思います。みなさんにエールをいただけますか?
きっとこの冊子を手にしている時点で、エールは必要ないのかな?と思ってしまうくらい、志の高い生徒さんがたくさんいらっしゃると思います。クリスティン先生もさっき言ってくれましたが、グッドデイもあれば、バッドデイもあって、毎回うまくいくわけじゃない。モチベーションを保つのは大変だと思いますが「いつかこうなるんだ」という理想の自分の姿をイメージし続けて、一緒にがんばりましょう!

森崎ウィン

1990年生まれ。小学4年生で来日、中学2年生のときに現在の事務所にスカウトされ芸能界入り。同時に俳優としても活動開始。2018年公開の、スティーブン・スピルバーグ監督の新作『レディ・プレイヤー1 』に抜擢され、一躍話題に。2020年からは歌手MORISAKI WINとしてメジャーデビュー。俳優としても出演作の公開が多数控えている。

Interviewer
Christine

ECC外語学院教務トレーナー。日本語も交えながらのインタビューで、現場を盛り上げてくれました。「言葉が身についたと感じた瞬間」については森崎さんと偶然の一致が…。

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