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2018.12.17

百人一首の英訳から見る日本の精神

みなさんは百人一首をしたことがありますか? 学校で大会があったという方や、お正月に家族と競ったことがあるという方も多いかもしれません。今回は、そんな日本の文化を伝えるツールのひとつでもある百人一首を英訳したピーター・マクミランさんにインタビュー。

ピーター・J・マクミラン
詩人/翻訳家/日本語研究者/版画家
代表作:『One Hundred Poets, One Poem Each』(小倉百人一首)

ーヨーロッパと日本の「美」の概念の違いはどんなところにありますか?
西洋の美学は、「普遍性」や「永遠」といったところに美しさの意味を求めますが、日本では「不完全なもの」や「儚いもの」に宿る美しさが評価されている。日本の美に初めて触れた時はショックでした。

ー具体的に、もともとの百人一首と英訳版ではどのような違いがあるのですか?
歌人の紀友則(きのとものり)が詠んだ「ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ」という歌がありますが、英訳版では「Cherry Blossoms, on this calm, lambent day of spring, why do you scatter with such unquiet hearts?」としています。これをさらに日本語に意訳すると「あなたはなぜ散ってしまうのですか」と桜を人に喩えています。これはもとの歌と変えた部分ですが、英語では擬人化することでより詩的な表現になるんです。

ーなるほど。古典だと掛詞が特徴的だと思うのですが、英語でも表現することはできるのですか?
歌によってはできるんですよ。例えば、「たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む」。これは平安初期の貴族・在原行平が詠んだ歌ですが、「まつ」に“松”と“待つ”の二つの意味があてられています。英訳版も「Though I may leave for Mount Inaba, whose peak is covered with pines, if I hear that you pine for me, I will come straight home to you」としていて、「Pine」に“松”と“恋しい”の二つの意味が掛けられている。実は英語的にはダジャレの部類になります。そうした掛詞が入れば入るほど少しチープな印象になってしまうのですが、日本の古典の世界ではいちばんの見せ所とも言える表現です。日本語の文化と英語の文化の違いを表すのにとてもいい例ですよね。

ー最後に日本文化について、想いを伺いたいです。
日本に生まれ育ったことや、美しい日本文化に触れられることに自信を持って欲しいですし、誇りに思って欲しいです。そして、プライドを持って自分の子ども達や外国人に、世界中に伝承していって欲しいと思います。

日本にいて、当たり前のように触れている文化も、他文化の異なる価値観を持つ国の方から見ると見え方も大きく変わります。自分たちの文化を知るとともに、他の国の文化や価値観について学んでいきたいですね。